2002 Natinal Conference
    by Osteogenesis Imperfecta FoundationOIFに参加して
 
                     心身障害児総合医療療育センター
                       整肢療護園長   君塚 葵
 
1)はじめに
 Osteogenesis Imperfecta Foundation(OIF)による2002 Natinal Conferenceに河村会長のご配慮により参加でき、時差ぼけを経験しないほどの短期間でしたがアメリカの骨形成不全症の方々に接することができ、「百聞は一見に如かず」で勉強になりましたので、不十分ながら見聞録として報告いたします。
 
2)カンファランスの主役達
一度にこれだけ多くの骨形成不全症の方(参加者名簿による参加会員数は166名、家族などの付き添い者は250名ほど)に会ったのは始めてであり年齢も様々でしたが、会場のホテルに到着時に河村さんが「ハイだー」と嬉しそうに声をあげたように、骨形成不全症の小さな子どもたちが活発に動き回っているのが印象深く記憶されています。皆が自信を持ち、自己アッピールを強くしているのは実力本位のアメリカ社会を反映していると感じられましたが、露骨なものではなく日常の努力に裏打ちされたものと感じました。成人では酸素を使用している方がかなり見られ、心臓弁の機能不全および脊柱側弯変形による心肺機能の低下の大きさとそれへのしっかりした対応が伺われました。
家族達は各会場で真剣に参加していて、講師への質問がたいへん活発でその質問内容は骨形成不全症をよく理解している事の判る的を得たものばかりでした。若い親の方も目を離さないようにしつつも、子どもに干渉しているという事はないように思われました。講師にたいする尊敬や信頼の大きさもその拍手などで感じられました。
参加者リストによると専門家等は90名ほどですが、講師陣のなかの整形外科分野では文献で名前を知っている高名な先生も含まれており、長年の献身的な経験に基づく実際的な話をされていました。
会場運営は小回りのきくもので、不都合なことがあると速やかに対応がなされ、参加者の協力の下にスムーズに行われ、とくに会長の気配りが目立ちました。子どもたちの集まるプレイルーム(子どもの預かり・10代の子への啓蒙活動の部屋など)、関連書籍やグッヅの販売コーナー、ドリンクサービスなども設けられていた。また。参加できなかったが、レセプションやデイ ナーが準備されていました。
 
3)講演内容について
講演スケジュールは3日間に複数の会場にわかれてテーマ別におこなわれ、希望により選択して参加するようになっていた。出席できたのは一部のみであるが、最近の学術的な講演と、社会参加・自立・教育・家族のあり方・車の運転技術の修得・運動のワークショップなどについての専門家を中心としての討論との二つがあった。
また、参加者による講演・討論への評価についてのアンケート用紙が配布され内容のよさ・改善した方がよい点などについて記載するようになっていた。
講演は 1)基礎、2)最近の骨形成不全症研究、3)小児の整形外科手術、4)骨形成不全症T型について、5)骨形成不全症の遺伝、6)成人期疼痛のマネージメント、7)小児の術後ケア、8)装具と足の対応、9)骨折の初期対応、10)成人の骨形成不全症、11)装具の使用、12)虐待との鑑別、13)骨形成不全症における脊椎の問題、14)成人期の運動、15)聴力低下、16)神経障害の合併、17)呼吸について、18)歯のケアと矯正歯科、19)骨粗鬆症の予防と治療、20)栄養など 多彩で多岐にわたるものであった。
参加できたのは一部のみであり、すべては報告できないので、これらの要点はOIF発行のLiving with osteogenesis imperfecta ?guidebook for famillies- をネットワークOIが和訳した「骨形成不全症と共に」参照していただきたい。
 
-1)骨の基礎
骨形成不全症の骨はT型コラーゲンの異常によるもので、くる病のようにT型コラーゲンへのカルシウムやリンの沈着異常によるものではなく、芯となるT型コラーゲンの異常によりくる病とは異なって骨折しやすい。T型コラーゲンの構造の異常と量の減少との二種類がみられる。タンパク質であるT型コラーゲンを作る遺伝子の中のDNAの突然変異によって、T型コラーゲンの構造の異常(U・V・W型)や量の減少(T型)を生じる。
構造異常のT型コラーゲンが半分あるいは3/4程度のまでのものとそれ以上のものなどその状態に応じて重症度の違いとなってくる。また、T型コラーゲンの異常のみられる部位によって重症度を予測できる。T型コラーゲンの構造異常ではカルシウムやリンの沈着異常が伴う上、異常であるがゆえに体内から除去しようとするメカニズムに晒されて、異常ながらも骨であるその量も減少してしまう。さらには構造異常のために骨を作る骨芽細胞の機能が抑制されることも考えられている。
一方、正常な構造であるが量の減少している場合には軽症で、骨形成不全症T型を呈する。これは遺伝子の一部が傷害されているが、正常なT型コラーゲン生成が一部なされているためである。
成長期には成長に伴う新たな骨の形成が必要となるが、形成不十分であるうえに、体重の増加に勝てずに骨への負担が増し骨折を生じる悪循環に陥るが、成長終了以降では均衡が取れやすくなり、骨折が減少すると考えられる。
 
-2)最近の研究
骨形成不全症の成長終了前では骨代謝が亢進していて、骨の形成速度は健常者のよりも大きいが、成長終了後には逆転して小さくなることが多数例の検討で統計的に有意な差をもって認められたこと(成人の骨折の治り難さにあらわれている)、100例以上のビスフォスフォネートの長期投与例の検討がなされ、有効な例と効果の少ない例とがあり、関連因子の検討が今後進められる予定であること、次年次以降に向けて新たな薬物の研究がなされていて大きな期待が寄せられていることなどが報告された。
 
-3)髄内釘手術
小児に主に変形矯正・骨折予防のために用いられる。その結果、運動機能の向上とくに歩行へと発達させられる可能性があるが、これにより全例が歩行可能となるわけではない。成長期であるので骨の成長につれて伸びるtelescoping 髄内釘が用いられる。
手術時期は骨の太さによるもので、市販されているものの最小径は3mmであり髄腔がこれ以上の大きさがないとtelescoping rod は使えない。これより細い伸張しない髄内釘では力学的に弱く骨ごと曲がりやすい。
術後4週間の外固定であり、大腿骨の場合肋骨下部から足部までの長いギプスを巻く。その後立位や歩行訓練では装具にて保護し、水泳を含めたリハビリテーションをおこなう。大きな手術であり、出血・骨癒合の遅延・髄内釘の移動・下肢の神経循環障害などが合併症としてある。合併症がないときでも成長に伴い髄内釘の入れ替えを必要とすることがある。骨がしっかりしてきたと思われても、髄内釘の抜去はふつうおこなわない。
 
 3-4)骨形成不全症T型
骨形成不全症のなかでもっとも頻度の高いものである。T型の中にはわずかな回数の骨折しか起こさず、身長の平均以上である場合がみられ、子どもの時には骨形成不全症と診断されないこともあり、その人の子どもが骨形成不全症と診断されてはじめて、青色強膜などにより本人が診断されることもある。
T型では成長終了後の骨折は殆どなくなる。しかし、閉経後の骨折増加には注意を払わなければならない。
皮膚の生検やDNAで確定するが、皮膚生検を受けているのは10〜15%であり、DNA検査を受けているのは5%程度である。 DNAでは本症でも検査で異常なしとなることも多い。出生前診断では胎盤絨毛検査(妊娠10〜14週に行う、本検査による流産は1%と考えられている)や羊水検査(15〜18週におこない、流産の危険は0.5%と考えられている)について知っておかなければならないし、超音波検査では発見できないことが殆どである。
親が骨形成不全症である場合には、生まれた子に骨形成不全症があるかないかを速やかに調べるべきで、それによって虐待の嫌疑を懸けられるのを防ぐようにする。また、子どもを作ろうとする時にはあらかじめ遺伝相談をおこない、皮膚生検を受けておくことが望ましい。
T型では骨折治療が要となる。なるべく短い期間の固定と適切な運動訓練が重要である。繰り返す骨折と高度な変形には髄内釘手術が適応となる。
筋張力低下・関節弛緩・再骨折を恐れてと運動不足などにより運動発達が遅れることがあり、遅れに気づいた場合にはリハビリテーションを行うことが進められる。水泳などの重力負荷の小さい状況・楽しみながらの運動が適している。
ビスフォスフォネート投与も必要に応じて薦められる。
T型では聴力低下が50%で、10代あるいは成人初期にはじまる。定期的な診察が望まれ、補聴器や手術などが選択される。
周囲から本症と理解されず、過保護や運動に際して怠け者と受け取られがちであるので、あらかじめ説明・情報提供をして理解を得るようにすることも大切である。
 
-5)骨形成不全症における遺伝相談
本症は以前には優性遺伝と劣性遺伝とが指摘されていたが、最近は患児が一人のみでも殆どが優性遺伝であり、劣性遺伝は稀であると考えられていて、突然変異によるものが25%程度と考えられている。次の子に突然変異がまた起こる確率は特別なものではなく、一般の場合と同じである。この突然変異の原因は不明であり、環境因子・食事・行動因子など判っていない。
最重度であるU型では多くが優性遺伝であるが、中には兄弟例がありそのため以前には劣性遺伝と考えられたが、モザイクと考えられるようになった。これは個々の精子や卵子に突然変異が起こるのではなく、全部の精子や卵子にではないが複数の精子や卵子に突然変異が起こるためである。U型におけるモザイクは2〜4%とされる。
両親ともに骨形成不全症である場合には、出産毎に75%の確率で骨形成不全症の子どもが産まれる。それは、片親から25%づつで計50%、両親両方からが25%であるが、両親ともにからでは重症で生きて生まれることはないと考えられている。
 U型におけるモザイクでは、早期の超音波診断が有用で、14〜16週で診断可能である。V型では16〜18週で診断可能であるが、T型では妊娠後期でも診断されないことがある。
 
-6)疼痛のマネージメント
骨形成不全症では繰り返す骨折・X線では認められない微小骨折のため強い疼痛を長期に経験する。疼痛の慢性化は予防が有用であり、それが生じる前に対応することが望まれる。疼痛は主観的なものであり、例えば鬱状態では、疼痛はより耐え難いものとなる。急な疼痛は一過性であるが、慢性の疼痛は長引いて生活を混乱させ、心身ともに参らせてしまう。
慢性疼痛に対する治療の選択枝として、(1)15〜20分の局所への温熱(筋の緊張を軽減する)・冷却(腫脹炎症を抑える)、電気による経皮的神経刺激(脳への疼痛メッセージを妨害する)等、訓練士のもとでの運動(体内モルヒネであるエンドルフィンを増やす)、鍼灸、マッサージなどの方法のリハビリテーション関連、(2)レラックセーション訓練(呼吸集中法・音楽など)、専門家による器具を用いたバイオフィーッドバック、思念訓練(楽しい好きなことを思い浮かべるように集中する、好きな画像を見る等)、暗示療法など心理的関連、(3)各種鎮痛薬物・抗鬱剤・神経ブロックなどがあり、組み合わされて用いられる。
 
 3-7)骨折のマネージメント
骨折への固定といってもさまざまで、部位・年齢・骨折の状態によってことなる。主なものは石膏プス固定はもっとも多くおこなわれる基本的な固定方法である。これに準じるものとしては濡れてもかまわないものとしてガラス繊維を含んだギプスがあり、ほかに隣接関節の固定はしない装具固定、副木固定、牽引法などがある。
固定は最小限とし、患肢の荷重や運動をなるべく行えるようにする。
 
 3-8)小児の虐待との鑑別
骨がX線で一見正常に見える骨形成不全症では虐待と間違われやすい。骨形成不全症では皮膚が弱く内出血を生じやすいことも関与している。骨折で虐待と骨形成不全症との共通点は(1)さまざまな治癒段階にある多発性、(2)肋骨骨折、(3)脊椎骨折、(4)原因の外傷をを十分に説明できないことなどである。
アメリカでの幼児虐待に対する厳しい姿勢がうかがわれ、骨形成不全症家族への各州の法律に則った機関の利用などの法的あるいはケースワーカーにかかっている場合に病院を代えないようにするなどの専門家への対応のアドバイスが列挙されている。
子どもが隔離保護されてしまった場合には祖父母が引き取るように依頼すること、問題が解決された時にはコンピューターを含めてあらゆる記録から削除するように強く要求することがアドバイスされている。
OIFでは専門家リストを持っており、専門家を紹介する案内を作っている。
 
 3-9)聴力低下
骨形成不全症の50%にみられる。原因には一般の場合と同じく、騒音・頭部外傷・感染が関与している。発症はいつからでもあるが、年齢と共に頻度は増してゆく。
どの型の骨形成不全症にも伝導障害と神経障害の二通りがみられ、伝導障害の発症は例外も多くあるが20〜30代に多く、感染・中耳の閉塞・鐙骨の骨折などによる。神経障害では高齢者に多く、軽度・中等度・重度の3段階と、聞こえない音域による低音域・高音域・全音域とに分けられる。
早期に兆候(聞きとりにくい・音量を大きくしてしまう・うるさい環境では他の人に比べて聞き取りにくい・耳鳴り等)をとらえ、専門家の診察を早期に受ける。
とくに就学前に標準的な検査を受けることが望ましい。
補聴器は種々有り、よく合った者をみるけるのは忍耐が必要である。両側に用いると立体感の改善がみられることがある。Tswitchがあれば他の音機器と接続しやすい。
手術は耳硬化症とよばれる伝導障害で、鐙骨除去後プロステーシス挿入や人工内耳がある。前者ではレーザーを用いる方法で経験のある専門家によるのが適切で、一時間ほどで済む。合併症としては耳鳴り・味覚の変化・聴力低下などがある。人工内耳は骨形成不全症での適応は小さい。骨が弱いため電気刺激が顔面神経にながれていきやすい。
 
 3-10)歯の問題
骨形成不全症では顎の発育が不十分であるが半数例は問題なく、半数の例で変形しやすく容易に欠け、特別な歯のケアを要するなど歯の問題がみられる。
口腔は上下の顎骨の異常による咬合不全があり、かつ咬んだときに上下の歯の間に空隙ができ、歯列が不正となり、歯の発育が遅れやすい。
骨形成不全症の歯では表面のもっとも硬いエナメル質は問題なく、その下方のデンテインと継ぎ目およびデンテインの異常がある。デンテインが容易に摩耗し、エナメルが剥がれてしまう。
歯牙形成不全は乳歯からみられ白色を呈さず、一般に永久歯よりも乳歯に変化が強い。乳歯より治療が必要で摩耗がみられれば、歯冠をかぶせる。ふつうには抜歯などの歯の治療で顎骨の骨折する危険は少なく、特別な場合ののぞいては骨折に対する特別な注意は不要である。抜歯後の過剰な骨形成の報告はみられない。適切な歯磨きを指導し、フッ素入りの歯磨き粉が薦められる。この歯磨き粉はうがいして洗い流さずに口の中に過剰分を吐いてためて夜間口内に残るようにする。
7歳になれば矯正歯科のチェックを受け、必要に応じて矯正を受けるようにする。
骨形成不全症に対するインプラントの長期成績は判っていない。インプラントではしっかりと骨にポストが固定されなければならない。
 
 3-11)骨粗鬆症
骨形成不全症はシーレンスの分類では大きく4型に分けられ、各型とも個々のケースで重症度が異なるが、骨密度の減少(骨粗鬆症)はすべてにみられる。
骨密度は脊椎・手関節・股関節などで計測される。骨粗鬆症への対応としてあらゆる年齢での骨密度の増加と加齢による骨の減少の抑制とがあり、この点ではその他にみられる骨粗鬆症への対応と軌をいつにする。
骨密度の減少の原因として、固定(安静・不動)がまず挙げられる。骨折時の安静固定は避けられないが、固定中に動かさずに筋肉に力を入れる運動(アイソメトリック エクササイズ)や可能ならば立位荷重を行うことがよい。また、十分なカルシウム摂取が大切である。摂取の際には尿中カルシウム排泄の増加のないことを確認しておかなけらばならない。他に、たばこ・過度の飲酒・骨カルシウムを減らす薬剤についても配慮することが大切である。パミドロネートは骨形成不全症の子どもと骨形成不全症T型の成人に対して骨密度を増加させる。
閉経後の骨形成不全症の方で骨折が増加することが報告されている。エストロゲンホルモン補充療法が薦められる。
 
4.)終わりに.
報告したこれらの内容は毎年新しいものと置き換えられ、着実に確実なものに進歩していることが感じられ、我が国でも関連領域での広範な取り組みが一層進んでゆくことを願うものである。最後にこの機会を与えて戴いたネットワークOIの皆様に感謝するとともにご活躍を願うものです。(平成14年9月)