「虐待」と骨形成不全症

 虐待(特に幼児虐待)と骨形成不全症には、「骨折」という共通する事柄があります。
これまでのケ−スとしては…

1.OI児が骨折し緊急で診察を受けた医療機関の医師が「骨形成不全症児を初めて診察した」場合で、両親から聞く「骨折の様子(原因)」「両親の狼狽ぶり」などから(骨形成不全症の症状なのに…)「幼児虐待の嫌疑」を持つ場合
2.虐待をしている親が「うちの子は骨形成不全症だ」と言い張る(主張?する)場合

があります。  私たち骨形成不全症協会が経験した事例と米国骨形成不全症協会の発行した資料のなかから「虐待とOIについて」の訳文を紹介します。ことの性格上、無断での引用・掲載・転載・複写は、固くお断りします。希望される方は必ず事前に事務局宛ご連絡ください。

上記1の場合
 骨形成不全症の主症状は、骨が弱い(骨折しやすい)ことです。またわが子が骨折し泣き叫ぶ姿を見て狼狽しない親はいません。比較的希な骨の病気のため…知らない・診たことない医師が多く存在することは、やむを得ないことなのかも知れませんが…医師法により「診断」「治療」は医師の権能です。正直なところ子どもの一大事のときにその様な「嫌疑」をかけられては、まさしく「泣き面に蜂」です。
 私たち骨形成不全症協会では、「OI手帳(骨形成不全症者児健康管理手帳)」を発行し「骨折の記録」「骨形成不全症に係る主治医の氏名」など骨形成不全症に係る記録を記載し、提示することで「嫌疑」をかけられないように勧めています。(特に軽度の骨形成不全症児のご両親はご注意ください。)
またOI者児が入会する際にも入会申込書に医療機関名・医師名を記入して貰い、何かのときは確認が取れる様に対応しています。 この手帳を発行してから問い合わせなどはありませんが「嫌疑」をかけられてからでは遅いので、また骨折の記録などは年と共に薄れるので、日頃から記入する様に勧めています。

上記2の場合
 骨形成不全症協会の前身で任意団体ネットワ−クOIの時に2件の事例がありました。(1)友達からの相談
 友達が「幼児虐待の嫌疑」のため児童相談所に子どもを取られてしまった。本人(母親)は骨形成不全症だと言っている、どう対応したら良いか?というメ−ルが事務局へ届きました。詳細を教えてくれるようメ−ルをすると…

<1>子どもさんがOIだと何処で知ったのですか?
聞いたところ本屋で医学書を立ち読みして知ったそうです。診察を受けたのではなく自分で調べたと言っていました。
<2>児童相談所に保護されてからのお子さんの様子は?
 子どもを取り上げられ、強制的に施設に入れられたので、思い切り遊ぶこともないので、青色強膜もなくなり骨形成不全症は治って今は元気にしている様です。だから返して欲しいとネットワ−クOIではない骨形成不全の患者会の人にも同行して頂き児童相談所に行ったのですがダメだったそうです。(虐待していた親の談)

 「ヘン?マジかよ?」。でもメ−ルをくれた友達は、純粋に心配している様子だし…
うかつな事は言えないと考えた私は、息子の治療などでお世話になっている医師に相談したところ…「関わらない方が…」の一言。やっぱり…あの友達に何て話そう…傷つくだろうなぁなどと思いつつ意を決して正直にメ−ルを書きました。
 きた返事は…「友達が困っているので何とか力になりたいと考えていましたが…正直なところ「やっぱり」と思い当たることもありました。お忙しいのにご心配頂きありがとうございました。私はグラフィックデザイナ−をしています。ご協力できることがありましたらご連絡ください」とのことでした。お言葉に甘えることが得意?な私が、早速お願いして出来たのが…思い出深いネットワ−クOIのロゴマ−クです。
 それから数年経って、病院の外来にあるテレビでニュースが…幼児虐待で逮捕されたお母さんが、嫌疑不十分で釈放され(ご丁寧に涙など流して…)記者会見していました。

「死んだ息子は骨形成不全という病気で骨も内臓もボロボロだったんです…」

腹の虫が納まらない私は、先述の医師を捕まえて…「先生。ニュ−ス見ました?ど素人の言い訳を真に受けて警察は何やってるんだ!」と八つ当たり状態…「まぁまぁ」などと慰められたりして…(笑)
 それから数ヶ月経ち医師にお目にかかった時「そう言えば河村さん。検事さんから連絡いきました?」とのお話。「例の件で先生の所へ?」と聞くと頷いて…「レントゲンを見ましたが、とても丈夫な骨をしていました。河村さんの話も聞くように言ったのに…」と言われるので「先生のお話だけで充分でしょ。私はど素人ですから…これで当然の判決になると思います。ありがとうございました。」
 その後、ニュ−スで実刑の判決があったと知りました。病名をつける(診断する)ことは、医師のみに与えられた権能です。ど素人が本屋で立ち読み(タダ)で得た浅はかな知識で虚偽の主張をし…それを真に受け支援?する患者会の連中(任意の団体で無責任。何でもアリなのかも知れませんが…)それぞれに猛省して欲しいと思うのですが、期待しない方が良いのかも知れません。今後、同様の事例があったときは、せめて自らの身を守ることに専念しましょう。

(2)ハワイ在住の日系ママさんの場合
 上記(1)の件が落ち着いた頃…深夜に電話が鳴りました。出てみると…
私はハワイに在住する日本人です。幼児虐待の嫌疑で息子が州の機関に取られてしまいました。骨形成不全症なのにです。どうしたら良いでしょう?
 この手の相談に慣れたばかり?なので…下記の通りテキパキ?と話しをしました。
「OIについて医師の診察を受けたことがありますか?」
 ハワイにはOIに詳しい医師がいないので、診せたことはありません。
「誰がOIと診断したの?」
 私がインタ−ネットで調べました。
「だったらOIFとは、連絡取りました?」
 はい。OIFはOIのボランティア団体で診断する権能はないので、まず医師からOIとの診断を受けてから連絡下さい。また言葉が思うように伝わらないときは、日本のネットワ−クOIに連絡して下さい。と言われ連絡先を教えて貰いました。
「基本的には、私たちとOIFと立場は同じで、あなたの子どもさんがOIであるか否かの判断は出来ません。日本語の資料も充分とは言えませんが、それなりに用意しています。まず医師の診断を受けてOIと言われてから連絡下さい。」
 当然のことですが、それ以降は連絡もありません。虐待する母親に手を貸さないで良かったと考えています。

虐待と骨形成不全症の診断(「骨形成不全症と共に」より抜粋)
 骨形成不全症が虐待と誤診され易いケ−スは、骨形成不全症のT型で軽症の患者かあるいは骨形成不全症を診たことがない医師が診断した場合に起こり、主に次のような点が誤診につながります。

1.両親が「どの様にして骨折が起こったか」を不幸なことに説明できない。
2.レントゲン写真上、様々な治癒過程の骨折が散見される。
3.明らかな出血斑が見られる。
4.レントゲン写真上、骨の構造は正常である。
5.外見上子どもが正常に見える(軽度の骨形成不全症)

あるOIFのベテランカウンセラ−は不幸にして児童虐待の疑いをかけられた骨形成不全症児の親は、コラ−ゲン検査を受けたがらないと言っています。
コラ−ゲン検査は完全ではなく一定の割合で誤診します。しかし陰性と診断された場合は、検査せずに診断がつかない場合よりも不利になるからです。骨形成不全症に精通した医師による臨床診断の方が信頼性が高い場合があります。
 米国では警察などの取締機関の権限が強く、嫌疑がかかるとスグに子どもを保護するためか、OI児を被虐待児と疑った時点で強制的措置にでます。結果として、特に軽度のOI児を被虐待児と間違えるケ−スが多いようです。
反面、日本の取締機関は慎重というか…腰が重いため同様の間違えるケ−スは少なく、逆に被虐待児の親の言い訳?に使われるケ−スが目立ちます。
(具体的内容は、診断の際に不都合となる可能性に配慮し割愛させて頂きます)
骨形成不全症児の場合一時的にしろ嫌疑をかけられた親には不快な思いが残るでしょうが、虚偽の主張をしている場合も含め、いずれは骨形成不全症に精通した医師により、必ず真実が明らかにされます。虚偽の主張は、無駄であるばかりか情状を極めて不利にするだけであることを明確にしておきます。