OIの分類・原因遺伝子同定の最新動向

河村 進吾

理化学研究所・遺伝子多型研究センター・変形性関節症関連遺伝子研究チーム/

骨系統疾患コンソーシウム

 

はじめに

 OIは、遺伝形式や合併する目や歯の異常をもとに、長らく4型(I-IV型)に分類されていました(いわゆるSilence 分類)。そして、近年新たな型(V-VII型)が3つ追加されました。本稿では、OIの分類、および原因遺伝子の最新動向について述べたいと思います。

 

1)OIの分類

 現在、OIは以下のように分類されています。

I型:軽症。出産前後の時期に大腿骨彎曲や骨折を認めることがありますが、通常は歩行開始後に骨折を認めます。青色強膜は出生時より明らかですが、年齢と共に軽減します。歯が正常なものをIA型、歯牙形成不全を伴うものをIB型と呼んでいます。

II型:最も重症で出生前後に死亡するとされています。強膜は暗い色で、頭蓋は非常に柔らかい。四肢は短く、彎曲し、狭い胸郭が特徴です。8割が生後一月以内に主に呼吸不全のため死亡し、一年以上生存する例は稀とされています。呼吸不全による哺乳障害のため、栄養摂取が不十分なことが多く、肋骨や長管骨の太さ、変形により更にIIAIIBIICの三つに分けられます。(しかし、近年の医療技術の向上により、生存するケースも稀に報告されています。)

III型:重症型。胎内での骨折により出生時より骨変形を認めます。頻回の長管骨骨折のため変形は進行し、歩行不能となります。脊椎変形のため、呼吸不全を来すことがあります。強膜は出生時には淡い青色ですが、次第に正常に近くなります。歯の形成不全を認める例が多いとされています。

IV型:軽度〜中等度の変形を来し、側彎が進行することがあります。強膜は正常か灰色がかった色で、歯牙形成不全を認めるものが多い。

V型:中程度〜重度の骨の脆弱性、中程度の変形。撓骨頭脱臼、骨折部位における仮骨形成の肥大、前腕骨の骨間膜の石灰化を特徴とします。青色強膜、歯の形成不全はありません。

VI型:中程度〜重度の骨格変形。青色強膜、歯の形成不全はありません。骨組織像が特徴的で、魚鱗様の骨組織像と類骨の過剰を示します。カルシウム、リン酸、副甲状腺ホルモンまたはビタミンDの代謝異常はなく、成長軟骨の石灰化は正常に進行します。

VII型: 常染色体劣性遺伝。表現型は中等度から重度であり、出生時の骨折、青色強膜、近位節短縮、下肢の早期な変形、内反股が特徴です。

 

X線所見

 すべての型に共通して骨折、及びそれによる変形(長管骨彎曲、脊椎の変形など)、骨減少症を認めます。II型では頭蓋骨の骨化不全(膜様頭蓋)が著明で、肋骨は短く太く数珠状となります。大腿骨はアコーディオン様(IIAIIB型)。IIC型では長管骨は細く捻れており、III型では、特異的な所見ではありませんが、間挿骨(頭蓋骨縫合部の小骨片)がよくみられます。長管骨は細く、骨幹端のポップコーン様変化や脊椎変形も認めます。Vでは、成長軟骨に隣接する不透明な骨幹端のバンドが特徴であり、VI型では偽骨折、骨幹端の硬化がみられます。

 

遺伝

 遺伝形式はほとんどが常染色体優性です。II型、III型の一部とVII型は常染色体劣性遺伝と報告され、これについては議論が過去に多くなされましたが、後述のように最近、分子レベルで証明されました。

 

2)OIの原因遺伝子

 以前より、OIの原因遺伝子として、I型コラーゲン (type I collagen) 遺伝子が知られていました。OIは、I型コラーゲン遺伝子(COL1A1COL1A2)の変異によるものが90%といわれていますが、最近、新たな原因遺伝子が2つ発見されました。

 

I型コラーゲンとその遺伝子

 I型コラーゲンは、骨、歯、皮膚、靱帯、腱などに存在する、これらの組織の主要な構成成分です。骨基質の蛋白成分の90%以上をI型コラーゲンが占めています。I型コラーゲンは、a1(I) 鎖とa2(I)鎖の2種類のペプチド(a鎖)からなるhetero-trimer(ヘテロ三量体)で、a1(I)鎖はCOLlA1 a2(I)鎖はCOLlA2によってコードされています。2つのa鎖はともにN-C-末端のglobular domain(プ口ぺプチド)と中央のtriple helicalcollagenousdomain(三重らせん領域)からなる構造を持ちます。コラーゲンを特徴づけるtriple helical domainは、Gly(グリシン)-X-Yのトリプレットの繰り返し構造からなります(X, Yは任意のアミノ酸で、Xはプロリン残基、Yはハイドロキシプロリン残基であることが多い)。このGly-X-Yの繰り返し構造が、triple helixの形成と安定化に必須で、グリシン残基をらせんの中央に配した非常に安定な構造をなします。コラーゲン分子は、3本のa鎖がより合わさったらせん構造を取ります。粗面小胞体の中でtriple helixを形成し、ゴルジ体で修飾されたコラーゲン分子は細胞外へ分泌され、分子間で架橋を形成して結合し、規則正しく配列して線維を形成します。

 

OIにおけるI型コラーゲンの変異

 OIで異常のみられる組織の分布とI型コラーゲンの分布が共通することから、早くからI型コラーゲンの異常がOIの原因ではないかと疑われ、すでに1970年代には形態学的、生化学的な異常が示されていました。I型コラーゲン遺伝子(COL1A1 COL1A2)が発見されるとOI患者で変異が検索され、予想通りこれが疾患遺伝子であることがわかりました。現在までに200種類以上のI型コラーゲン遺伝子の変異が発見されています。最も多い変異のパターンは、点突然変異*1によるtriple helical domainのグリシン残基のミスセンス変異です。グリシン残基以外のアミノ酸のミスセンス変異、splice donor site*2スプライス供与部位)の点変異、欠失、挿入も報告されています。変異の発生部位は、a鎖全体に及び、hot spot*3はありません。以前はC末端に近い部位の変異ほど重度の表現型になると言われていましたが、現在では否定されています。

 

I型コラーゲンの変異によるOIの発症の分子機構

基本的な異常は、I型コラーゲン量の減少です。減少を引き起こすメカニズムとしては二つが考えられています。一つは変異a鎖が、triple helixの形成に関係しないもの、もう一つは形成に参加するものです。前者は、変異によるmRNA*4の安定性の減少、変異a鎖の安定性の減少、コラーゲン分子の形成障害などによる単純なa鎖の量の減少です。後者は、いわゆるdominant negative*5機構(protein suicide)です。異常なa鎖がtriple helix形成に参加するとコラーゲン分子の形成・分泌の障害、安定性の減少、コラーゲン超分子の集合の障害を引き起こします。

 

OIの新しい原因遺伝子

 以上のように、OIの発病にはI型コラーゲン遺伝子が深く関与することがこれまでに報告されてきました。しかし近年、I型コラーゲンの修飾に関与するタンパクをコードするほかの遺伝子も、OIに関与していることがわかってきました。以下の章からは、最近発見されたOIの原因遺伝子、CRTAPP3H1について述べたいと思います。これらは、共にコラーゲンの翻訳後修飾に関する酵素複合体を構成するタンパクで、I型コラーゲンを中心に、様々なコラーゲンの繊維形成に異常を引き起こします。

 

CRTAP

 CRTAP (cartilage associated protein)は、P3H (prolyl 3-hydroxylase 1; プロリル-3 水酸化酵素) ファミリーに属する機能未知のタンパクです。プロリル-3水酸化は、コラーゲンのGly-X-Y tripletX位プロリン残基に起こります。IV型コラーゲンでは10-15ヵ所に、I型とII型コラーゲンでは986のプロリン残基ただ1カ所に起こり、コラーゲン繊維の形成、機能に影響すると考えられています。Crtapノックアウトマウスの表現型が劣性遺伝を示すOIの臨床像に類似していたことから、劣性型OI患者においてCRTAP変異を検索した所、新生児致死性のII型と中程度の重症度のVII型の家系で変異が発見されました。II型では、エキソン4の一塩基の欠失が、VII型ではイントロン内の点変異によるスプライシング異常がみつかりました。どちらもframe shiftによるnonsense変異*6を生じ、mRNAの減少を示しました。mRNA量はII型では正常の1%VII型では10%でした。

 

P3H1

 P3H1、別名leprecan: leucine proline-enriched proteoglycan (LEPRE1)CRTAPと複合体を形成し、プロリル-3水酸化活性に関与します。劣性遺伝を示すOICRTAPの変異が見つかったことから、P3H1でも劣性遺伝型OI家系で変異が検索され重度・致死性のOIの原因であることがわかりました。5家系で計4種類の変異が同定されました。いずれもframe shiftによるnonsense変異を生じ、mRNAを対照の5-21%に減少させました。P3H1タンパク量は対照の1/4以下に減少しました。患者はII型・III型のOIの典型的な特徴である青色強膜、三角形の顔、および狭い胸郭とは対照的に、白色強膜、丸い顔、樽状胸郭を持っていました。骨密度は従来の重度OIよりも低く、Cabralらはこの表現型を、VIIIOIとして新たに分類するべきであると主張しています。

 

OIの遺伝子診断

 I型コラーゲン遺伝子は2つあり、共にエキソンの数が多く(54個)、変異のhot spotがないので、遺伝子診断には不利です。I型コラーゲン遺伝子変異によるOIは基本的に優性遺伝であるので、生化学的にI型コラーゲンに異常を持つ患児を持つ健常な両親からのOIの再発危険率は本来ほとんど0です。しかし現実には約2%に再発が見られます。従来これは、生殖細胞モザイクのためと考えられていました。最近のCRTAPP3H1の変異による劣性型の存在の証明により、生化学的にI型コラーゲン異常が立証されていても、25%の再発のリスクがある可能性を考慮する必要があることが明らかになりました。

 

おわりに

 新たな原因遺伝子がみつかったことにより、より正確なOIの診断、リスク診断が可能となりました。今後、P3H1CRTAPと複合体を形成し、プロリル-3水酸化活性に関与するタンパクをコードする遺伝子の中から、更に新たなOIの原因遺伝子が発見される可能性があります。更なる遺伝子の同定は、遺伝子診断の精度を向上させるのみならず、上記のVIII型や『P3H-pathy(プロリル-3水酸化酵素異常症)』と言ったような新たな疾患単位を生み出すことになるでしょう。また遺伝性のモデルであるOIを突破口に、一般の、特発性の骨粗鬆症の遺伝的要因の解明が進むと期待されています。


謝辞

 本稿は「骨粗鬆症治療」20076月号、および臨床雑誌「整形外科」20077月号に掲載された記事を基に執筆致しました。執筆にあたり、理化学研究所・遺伝子多型研究センター・変形性関節症関連遺伝子研究チーム・チームリーダーの池川志郎先生に暖かいアドバイスを終始いただきました。ここに御礼申し上げます。

 

注釈

*1:一つの塩基が別の塩基に変わる変異。

*2pre-mRNAmessenger RNA, messenger ribonucleic acid)のスプライシングに重要な5'スプライス部位と3'スプライス部位は別名ドナーサイト、アクセプターサイトとも呼ばれ、それぞれイントロンの上端と下端に位置する。

*3遺伝子中の突然変異を起こしやすい部位。

*4mRNADNAのアミノ酸を決める部分、遺伝子の情報(塩基配列)を細胞核内で写し取った一本鎖RNAで、細胞核の外にあるリボソームに運ばれ、リボソーム上でタンパク質へと翻訳される。 mRNAD-リボースを糖成分、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、ウラシル(U)の4種類のうちいずれかを主な塩基成分とするRNAで、この塩基の配列で遺伝情報を写し取る。

*5本来の遺伝子産物の機能を阻害する遺伝子変異(野生型に対して優性な表現型喪失変異)をもつ。

*6アミノ酸のコドンが終止コドンに変わる変異。

 

本論文は、骨形成不全症協会のために書かれたいわゆるオリジナルで、

近日発行の会報に掲載の予定です。無断の転載・引用・複写を禁止します。

  2008年1月